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認知症のケア 認知症は良くなる 事例
 

ある老人保健施設の入所相談の場面

82歳のAさん(男性)が家族に車椅子を押されて入所のためやってきた。

Aさんは5年前ごろから言うことがおかしくなり、近所の医師から「アルツハイマー病」との診断を受けていた。

8ヶ月前に肺炎にかかり、某病院に入院し、肺炎は治ったものの興奮や乱暴などの問題行動が見られ、病院のすすめもあって別の「療養型病院」に転院した。
そこでも問題行動が修まる気配はなく、入院期間も6ヶ月を過ぎたことを理由に転院を促され、この老人保健施設へ相談の後今日の入所を迎えたのである。

家族は80歳の妻と56歳、50歳の2人の娘で、このうち長女が同居していてこれまでAさんの介護を主に行っていた。

Aさんの様子
・意識はぼんやりしていて、顔つきや目に生気はなく、話しかけても答えない
・ADLは全介助でオムツを使用し、日常的な移動も全介助車椅子となっている

前の病院での様子
・日中ほとんどはぼんやりしているが、時に独語、大声を出して意味の分からない言葉を発する。夜間も不穏になることがある
・意思の疎通を全く欠いている
・スタッフが介護のために体に触れたときなど手を払いのけたりつかみかかることがある

施設の介護看護責任者の判断
 まずAさんの活気がない様子から典型的な脱水を起こしていると判断。
 家族にこの点を尋ねると、前の病院ではスタッフが敬遠してか水を積極的に飲ませている様子は見られなかったという。
 Aさんの痩せが気になるので、食事のことも聞いてみると、同じようにスタッフの人手不足からか、テーブルでは依然した後、ほとんど介助せずに本人の食べるのに任せ(結果的にほとんど食べ残していた)、時間が来ると下膳してしまうという。
 排泄は入院の最初からオムツになっており、時間を決めて交換していたが、不潔な状態だった。
 以上の情報から当面のケア方針を立て、家族に次のように伝えた。
 Aさんは明らかに「脱水」「低栄養」があるので、今日から1日1300ml以上の水分補給、1500Kcalの食事をとっていただくようにします。
 オムツは、2〜3日排便リズムを調べて介助でポータブルトイレ使用を開始し、早い時期にオムツをはずします。下剤が処方されていますがこれは当施設では使わないように、他のケアを行っていきます。
 「脱水」「栄養」「排便」へのケアによってAさんの行動はほとんどおさまると思います。当面このケアで経過を見て、その後になお症状(認知症の異常行動)が残るようならそれに対応するケアを行いましょう。

Aさんの経過
 早速始まった水分補給の成果は絶大で、入所第2日目には意識もはっきりとし、スタッフと簡単なやり取りをするようになった。
 1週間ほど経過した頃には、便意を訴えるようにもなり、排便リズムをもとにポータブルトイレ使用という方針から、本人の訴えにより間に合えば車椅子で一般トイレ利用というように変更した。食事は初日こそ食べてもらうのに苦労したが、脱水が改善し意識がはっきりしてくると自分から食べるようになり、全量摂取を重ねていった。
 夜間の不穏状態は初日からみられない。
 意味不明の独語も1〜2週間で少なくなり、介護のスタッフへ乱暴する様子もない。
 状態が改善するのにあわせて、リハビリの平行棒で歩く練習が始まり、居室棟ではスタッフの介助で歩くというケアを始めていった。
 デイルームでの集団でのレクにも参加するようになり、笑顔が見られ、スタッフや他の利用者に自分から話しかけるようになった。
 入所2ヶ月ほどでAさんは手すりか歩行器を使えばADL(入浴以外)はほぼ自立という状態となった。
 認知症の症状は、興奮、不穏、粗暴などのいわゆる問題行動はすっかり消失し、年齢相応と見られる軽いボケはあるだろうが、生活状況はごく平凡な高齢者の姿に戻った。
 家での介護をあきらめて次の特養ホームの申し込みまで行っていた家族は、Aさんのあまりの変化に驚き、こんなによくしてくれた施設への感謝とともにこれなら家に引き取って世話ができるということになった。





「アルツハイマー病」という診断から
「治らない」「進行する」「よくならない」
という認識をしてしまう人は多いと思う。

確かに、脳萎縮や進行は抑えられないかもしれない。

しかし、水分、食事、排泄、運動、その人へのかかわりが改善されれば
認知症を治す・・・ぐらいの成果は出ます。

あなたがかかわる認知症の人の、
「飲む」「食べる」「出す」「動く」「かかわる」ことは
十分ケアがされていて、問題ないでしょうか?

水分は1日1300ml以上摂っていますか?
食事は1日1500kcal以上摂っていますか?
排便は5日に1回以上ありますか?
運動量は少なくないですか?
その人と接していて充実していますか?

こういった基本的なケアで一部の認知症の人はよくなるのではないかと思います。
16:16 | 高次脳機能 | comments(2) | trackbacks(1) | pookmark
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コメント
私の担当した症例は、なんだかボンヤリしていて起立台で寝ていたり、座ったら寝ていたり、話をしていても全然活気がなくて、血圧も低かったです。
あとからわかったのですが、1日に400mlぐらいしか水分摂取していない脱水状態でした。
ちょっと調べたり聞いたりすればわかることだったのに、なんでしなかったんだろうって、後悔しています。
2010/03/12 9:19 PM by あんぷ
とても良いことに気がつきましたね☆

PT・OTは身体機能に偏る傾向があります。それも大事なんですが対象者本人の生活はそれだけではありません。栄養状態重要ですね。水分量の把握、とても重要です。
あとは本人の興味・関心、生きがい、役割、家族のQOL、介護保険スタッフのかかわりなど、対象者のために集めなきゃいけない情報量って本当はものすごい膨大な量になるんです。

今回の症例はとても良いことに気づかせてくれたと思います。その方に感謝してくださいね☆
2010/03/21 7:48 AM by MTひろ
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